TEAMSHACHIとの出会い 5

出演回の配信日が近づくにつれて、センムは落ち着かなくなりました。

スターダストプロモーションのPOPO氏、スクラップのTプロデューサーとやり取りをして、集合の日時を確認しました。

13日20時30分、都内某所に集合との事。

また、構成台本をいただき確認したところ、オープニング、今週のシャチにつづいてゲストトークのコーナーでセンム登場とありました。そして更に今週の謎解きコーナーにも参加要請されていました。

そうこうしているうちに、2020年1月13日はあっという間に来ました。

新人は諸々準備をしてセンムを送りだしました。

 

ここからは聞いた話を想像で書く事になります。

フィクション濃度が高くなりますのでご注意ください。

 

【愛とツチノコの夜】その一

寒い日だった。

天気がいいのが救いだった。

(3連休の最終日が休日出勤と言うのは残念だが、重大な使命があるから仕方ない。)

夕方家を出たセンム入江は、日本一、いや世界一乗降客の多いともいわれている駅に降り立った。

腕時計を見ると20時15分。

集合時間は20時30分だ。

薄暗くなったビル街に吹く北風から逃れるようにマフラーに顔を隠し、コートの襟を立ててセンムは歩き出した。

約束の場所は都内某所にあるビルの13階だった。

グーグルマップを見ながらセンムは歩いた。

月曜の夕方とは言え、休日のオフィス街は人気が少なかった。

(ここだ!)

駅から歩く事10分くらいのビルの前でセンムは立ち止まった。

そこは寄り合いのオフィスビルだが、祭日なのでひっそりとしていた。

1階にはテナントの店も入っており、かろうじて人の気配がした。

「13階…だったよな…」

エレベーターのフロア表示には12階までしかない。

西洋では不吉な数字のフロアは存在しないという噂を思い出したセンムは、もしやこの世には存在しない異空間に招かれているのではと不安を感じ、すぐにそんな事を考えた自分を笑った。

「失礼、13階に行きたいのですが、行き方を教えてくれませんか?」

警備員室でセンムが聞いたところ、オフィスビルのテナントは12階までで、13階は屋上にある部屋だとの事だった。

警備員から聞いた通りに12階までエレベーターで上がり、非常階段で1階上って屋上に出ると、照明の点いた人の住めそうなこじんまりとした家があった。

(まさかこんなところにこんな場所があるなんて…)

センムは不思議に思い、改めて見回すと大都会の夜景が見渡せた。

玄関をノックして開けると、柔和な青年が気さくにセンムを迎え入れた。

「SCRAPの柚姫の部屋プロデューサーのTです」

「うちのツチノコが大変お世話になっています。サンスマイルのセンム入江です」

センムが部屋に入ると、そこは10畳くらいのリビング風の部屋で、奥には見慣れた本の並んでいない本棚の前にソファが置いてある。

ゲストであるセンムを忖度してくれたのだろう、ソファの上にはサンスマイルの商品「つちのこつかまえた!」がいつもの2~3倍は並んでいる。

センムと話しながら、Tプロデューサーは手際よく配信の準備をしていた。

やがてスタイルの良いロングヘアの美女と優しそうな男性二人が現れた。

女性はTEAMSHACHI(グループ名読み:シャチ)のメンバーでスターダストプロモーション内スターダストプラネット所属のアイドルタレントだ。

TEAMSHACHIは愛知県出身の大黒柚姫嬢の他、秋本帆華嬢、咲良菜緒嬢、坂本遥奈嬢からなる名古屋発ラウドポップユニット。

センムはYouTubeでみた彼女達の熱いライブに感動を覚え好感を抱いていた。

大黒柚姫嬢と共に入って来たのは彼女のマネージャーのPOPO氏、それから既に何度か見た柚姫の部屋に出演している瀬戸口氏だった。

「こちらサンスマイルからいらした入江センムです」

Tプロデューサーが緊張するセンムをみんなに紹介する。

「サンスマイルさん、本日は無理を聞いていただきご出演いただきありががとうございます!いやぁ、黙ってツチノコ使わせてもらっているのがバレた時はビックリしましたけど、暖かくお許しくださった上に出演までしていただいて感謝しています」

窓口となってセンムを呼んだPOPO氏が人懐っこくニコニコ笑いながら言った。

「いえ…こちらこそお世話になってます…」

「サバラサバラ!(こんにちは)」

センムは初対面の、しかも芸能人たちに会って緊張していたが、大黒嬢が不思議な言葉でにっこり微笑むと蕩けそうになってしまった。

「よくいらっしゃいました」

瀬戸口氏は柔和な顔だがどこか警戒心が見え隠れしている。

次第にOAの時間が近づいてきた。

【柚姫の部屋 第25回】 つちのこがばれたあああああ!?どうなる番組配信! 誕生秘話を製造メーカー”サンスマイル”専務が語る…TEAM SHACHI大黒柚姫

この頃、全国のルームメイトは番組のツチノコ無断採用によるメーカー幹部の襲来に一抹の不安を感じながら「柚姫の部屋」の配信を待っていた。

 

 

つづく

 

次回【愛とツチノコの夜】その二

いよいよ配信が始まる。

スリル!サスペンス!

センムは無事任務を果たせるのか!?

 

※実在する団体や個人が出てきますが、会話等は全てフィクションです。

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コメント: 2
  • #1

    むらぞー (木曜日, 07 5月 2020)

    サバラサバラではなくバサラバサラ!

  • #2

    新人 (木曜日, 28 5月 2020 16:10)

    どうしてもサバラ、バサラ、バラサを混同してしまいます。
    むらぞーさん、早期の突っ込みありがとうございます。