怖い話1

柚姫の部屋のお題に転用すると先輩に言われてブログの公開を送らせていた内容です。

読んでいただけたのはいいのですが、新人の作品と読まれなかったのでガッカリです。

 

これは現実に起こった事件を元に書いたものです。

 

新人は大学生の頃、小学校の警備員のバイトをしていました。

警備会社に任せるかアルバイトを雇うかは学校の判断でした。

実入りのいいバイトですが、それなりに人は見られるので、先輩から後輩へ相伝のような形で受け継がれていました。

分配を減らしたくないのでその年は新人と後輩二人でやる事にしました。

二人で毎日泊まり込んでもいいし、一人で月半分止まってもいいという事なので、後者を選びました。

 

18時に全校舎の鍵をチェックして回り、残っている者がいれば帰らせたり、鍵がかかってなければ掛けたりして回ります。

30分くらいで1階から4階までを一回りして休憩。

22時に2度目の巡回に行きます。

要所要所の照明だけ点けて、再度1階から4階までを回ります。

夏熱く、冬寒いのを除けば楽勝な仕事です。

 

 

待機、宿泊は用務員室を使っていました。

用務員が17時30分までいて、入れ替わりで警備員が使います。

流しやシャワー、寝具もあり、テレビと扇風機とこたつはあり、それなりの居住環境でした。

怖がりですが、霊感の鈍い新人はそれほど苦になる仕事ではありませんでした。

 

先生たちが引き上げるのが20時、それ以降は巡回時間以外自由です。

テレビを見たり、本を読んで時間をつぶしますが、友達が来ることもありました。

 

8月の盆、高校の友達が警備員室に遊びに来ていました。

一緒にテレビを見てたのですが、22時になったので新人が巡回に行く準備をして立ち上がりました。

「巡回に行くけん、もう帰り!(巡回に行くから、もう帰れ!)」

「よか。今日泊っていくけん。俺もついていっちゃろうか?(いいよ、今日は泊まっていくから。俺もついていってやろうか?)」

友人は泊まる気満々で、夜の小学校と言う新鮮な環境に興味を持っていました。

新人が20個ほどの鍵束と懐中電灯を持って廊下に出ると、友達も着いてきます。

夜の校舎は周囲の民家までも少し距離があるため静かです。

新人は慣れているので照明は常夜灯のみを頼りに巡回していました。

長い廊下を二人で歩く足音だけが聞こえます。

4階の廊下を歩いている時、隣りを歩いている友達が急に小声で話しかけてきました。

「新人、もう一人おるごたあ…(新人、もう一人いるようだ…)」

新人は何を言っているのかわかりませんでしたが、やがて友達の言っている事に気付きました。

ヒタ、ヒタ、ヒタ…友達の足音がしていました。

ヒタ、ヒタ、ヒタ…新人の足音もしてました。

ヒタ、ヒタ、ヒタ…もう一つ足音がしていました。

 

友達は無言で正面を向いていました。

新人も無言ですが、仕事なので教室の中を懐中電灯でチェックしながら歩いていました。

その間も3人の足音がしています。

教室を全部見終わり、警備員室に戻り始めました。

二人は無言で歩き続けました。

足音は3つ聞こえます。

その時、友達が声にならない悲鳴を上げて走り出しました。

衝動的に新人も走り出しました。

二人は夜の校舎をダッシュして警備員室に駆け込みました。

「どげんしたと?(どうしたの?)」

新人が荒い息をしながら友達に聞きました。

友達は額に汗を浮かべて震えていました。

「新人が4階の教室ば見よう時、校庭側の窓ガラスば見たら、俺と新人の間にもう一人映っとったったい…(新人が4階の教室を見てるとき、校庭側の窓ガラスを見たら、俺と新人の間にもう一人映ってたんだ…)」

「!!!!」

新人は悲鳴を上げそうになりました。

 

結局、警備員室の廊下側の窓の外で足音がしているような幻聴に悩まされながら、その夜はテレビをつけっぱなしにして、電気を煌々と点けて夜を明かしました。

朝、先生達が出勤してくるや否や、新人と友達は逃げるようにして学校を後にしました。

 

その夜の出来事が何だったのか今もわかりません。

学校は広い敷地を必要とするため、曰くのある場所に建つことが多いと聞きます。

誰も知らない因縁がその小学校にはあったのかもしれません。